遺族厚生年金の見直しはいつから?法改正の背景や変更ポイントを解説
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遺族厚生年金は、働き手を失った家族の生活を支える大切な制度です。2025年6月に年金制度改革法が成立し、遺族厚生年金の見直しが行われることが決まりました。この記事では、法改正の背景や遺族厚生年金の見直しの内容をわかりやすく解説します。
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遺族厚生年金の見直しの概要

まずは、遺族厚生年金の制度内容と見直しが検討されることになった背景について見ていきましょう。
遺族厚生年金とは
遺族厚生年金とは、厚生年金保険の被保険者が亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受け取ることができる年金です。働く人が亡くなったときに、遺された家族が生活を維持できるようにするのが目的です。
遺族厚生年金は、遺族のうち最も優先順位の高い方が受給対象者となります。
<遺族厚生年金の受給対象者の優先順位>
- 子のある配偶者
- 子
- 子のない配偶者
- 父母
- 孫
- 祖父母
なお、遺族基礎年金を受給できる場合は、遺族厚生年金とあわせて受給できます。遺族基礎年金とは、国民年金の被保険者が亡くなったときに、亡くなった方に生計を維持されていた「子のある配偶者」「子」に支給される年金です。
法改正の背景
現在の遺族厚生年金は、性別や年齢による不平等が指摘されてきました。特に子どもがいない60歳未満の方は受給要件に大きな男女差があります。
例えば、夫を亡くした30歳以上の妻には無期限で年金が給付され、30歳未満で死別した妻にも5年間の有期給付があります。一方、妻を亡くした55歳未満の夫には年金が支給されません。55歳以上で死別した夫は受給できますが、受給開始は60歳からとなります。
現在の遺族厚生年金は、まだ専業主婦の割合が高かった時代に作られた制度です。しかし、近年は共働き世帯の増加や女性の就業率向上など、家族の在り方が大きく変化しています。
社会の状況と制度内容が合わなくなってきているため、今回の法改正により遺族厚生年金の男女差が解消されることになりました。見直し後は受給要件が男女共通となり、原則として5年間の有期給付となる予定です(見直しの詳細は後述)。
遺族厚生年金の見直しはいつから?

今回の遺族厚生年金の見直しは、2028年4月から実施される予定です。ただし、すべての人が見直しの影響を受けるわけではありません。ここでは、遺族厚生年金の見直しの対象者、見直しの影響を受けない人について詳しく説明します。
見直しの対象者
遺族厚生年金の見直しは、男性は2028年4月から実施、女性は2028年4月から20年かけて段階的に実施されます。
男性の場合、18歳年度末までの子がいない60歳未満の方が、新たに原則5年間の有期給付を受けることができるようになります。女性と同程度に男性も遺族になると仮定すると、対象者は年間約1万6,000人となる見込みです。
女性の場合、施行直後に原則5年間の有期給付の対象となるのは、18年度末までの子がいない40歳未満の方です。新たに対象となる30代の女性は年間約250人となる見込みです。20代の女性は、現行制度ですでに5年間の有期給付となっています。
女性については、男女の就労環境の違いや現行制度を前提に生活設計をしている方に配慮するため、時間をかけて段階的に有期給付の年齢を引き上げることとしています。
見直しの影響を受けない人
以下のいずれかに該当する方は、今回の見直しによる影響はありません。
- すでに遺族厚生年金を受給している方
- 60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する方
- 2028年度に40歳以上になる女性
- 18歳年度末までの子を養育する間にある方
2028年4月に見直しが実施されても、「すでに遺族厚生年金を受給している」など、一定の方については現行制度の仕組みが維持されます。
法改正による遺族厚生年金の主な変更ポイント

今回の法改正で、遺族厚生年金はどのように変わるのでしょうか。全体像は以下の通りです。
ここでは、子どもがない場合を前提に、主な変更点を詳しく説明していきます。
原則5年間の有期給付に変更
現在の仕組みでは、一定の要件を満たすと遺族厚生年金が無期限で給付されます。見直し後は、男女ともに60歳未満で配偶者と死別した場合は、原則5年間の有期給付に変更されます。
これまでは支給対象外だった55歳未満の男性も、遺族厚生年金を受け取ることができるようになります。一方で、30歳以上の女性はこれまで無期給付でしたが、今後は5年間の有期給付となる点に注意が必要です。
有期給付加算の創設
見直し後は原則5年間の有期給付となり、子どもがいない妻はこれまでよりも受給期間が短くなってしまいます。その配慮措置として、遺族厚生年金の金額が増額されます。
現行制度の年金額は、亡くなった被保険者の老齢厚生年金の3/4相当額ですが、有期給付加算によって1/4相当額が上乗せされます。これにより、有期給付の額は現在の約1.3倍となる予定です。
継続給付(配慮が必要な場合)
原則5年間の有期給付が終了した後も、「障害状態にある方(障害年金受給者)」「収入が十分でない方」については、引き続き有期給付加算が上乗せされた遺族厚生年金を受け取ることができます。
例えば、就労収入が月額約10万円(年間約122万円)以下の単身者は、継続給付が全額支給されます。年収が増加するにつれて、年金額も調整される仕組みです。年金額にもよりますが、月収20万円から30万円を超えると継続給付は終了となります。
死亡分割の導入
死亡分割とは、亡くなった配偶者の報酬が高かった場合に、その配偶者の厚生年金記録を分割して遺族の記録に上乗せする仕組みです。これにより、遺族が将来受け取る厚生年金の額が増加するため、老後生活の安定につながります。
年収850万円未満の収入要件の廃止
現行制度で遺族厚生年金を受け取るには、「年収850万円未満」という収入要件を満たす必要がありました。見直し後はこの収入要件が廃止されます。配偶者との死別は生活状況を激変させるため、一時的な生活再建を支援する目的で収入要件を廃止するとしています。
中高齢寡婦加算の段階的廃止
中高齢寡婦加算とは、「夫が亡くなったときに40歳以上65歳未満で18歳年度末までの子がいない」など、一定の要件を満たす場合に、遺族厚生年金に65歳になるまで加算されるものです。令和7年度の加算額は年額62万3,800円となっています。
中高齢寡婦加算も専業主婦の割合が多かった時代に設計されたものです。妻を亡くした夫には、同様の仕組みはありません。男女差を解消する観点から、令和35年度まで25年かけて段階的に縮小し、最終的には廃止となる予定です。
遺族厚生年金の改正をきっかけに必要保障額の見直しを

今回の法改正により、妻と死別した夫も遺族厚生年金を受け取れるようになり、男女差が解消されます。ただし、原則5年間の有期給付となるため、今後の生活設計に大きな影響を与える可能性があります。新しい制度が施行されるのは2028年4月からですが、今のうちに必要保障額の見直しを行うことが重要です。
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まとめ
遺族厚生年金は、2028年4月から大きな見直しが行われます。男女の不平等解消を目的に、原則5年間の有期給付に統一されます。有期給付加算や継続給付といった新しい仕組みが導入される一方で、中高齢寡婦加算が段階的に廃止されるなど、世帯の状況によって影響は異なります。
今回の法改正をきっかけに、公的保障だけで家族の生活を守ることができるかを確認することが大切です。必要に応じて、専門家への相談を検討してみてはいかがでしょうか。


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