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スタグフレーションとはどんな状態を指す?原因と問題点を解説

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スタグフレーションとは、景気が悪くなっているにもかかわらず、物価が上がっていく状態のことをいいます。このような局面に突入すると、人々の暮らしはだんだん苦しくなっていきます。こうしたスタグフレーションのリスクが高まる中で、できる対策はあるのでしょうか?

スタグフレーションとは

景気停滞という意味の『スタグネーション』と、物価上昇を意味する『インフレーション』を合わせた合成語が『スタグフレーション』です。この二つの言葉が合わさっていることから分かる通り、景気が後退しつつあるのに物価が上がってしまう状態を表しています。

景気後退と物価上昇が同時に進行すること

本来であれば、景気回復時には物価上昇『インフレーション』が同時に訪れます。また、景気が後退するときには物価の下落『デフレーション』が起こるのが通常です。

しかし状況によっては、景気は悪化しているのに物価上昇が起こるスタグフレーションに陥るケースもあります。スタグフレーションが起こるときには、原材料などの値段が上昇し、それを企業が製品の販売価格に反映せざるを得ないための物価上昇が起こりながらも、収益性や給与の増加につなげにくい経済状況であることが特徴です。

第1次オイルショック後にも発生

日本でもスタグフレーションが発生した過去があります。きっかけは1973年に起こった第4次中東戦争です。このとき、石油輸出国機構(OPEC)の加盟国である中東各国は原油の共有を制限するとともに、輸出価格の引き上げも行いました。

エネルギーの多くを原油の輸入に頼っていた日本では、製造コストの高騰が一気に起こりました。この時期の物価上昇は第1次オイルショックと呼ばれ、消費者物価指数の前年比は、1973年に11.7%、1974年には23.2%を記録しています。

しかしこの物価上昇により国内総生産(GDP)が上向くことは無く、成長率は第2次大戦後、初めてマイナスとなりました。

スタグフレーションの原因と日本の現状

経済状況の落ち込みと物価上昇が同時に起こるスタグフレーションは、生産コストの高まりから始まるケースが多いと言えます。その原因と現在日本でインフレが進行している状況や、スタグフレーションのリスクについても見ていきましょう。

人件費や原料価格高騰による生産コストの上昇

物価上昇は需要が供給を超えることで発生する以外に、生産コストが上がることでも発生します。例えば原材料価格や人件費といった生産コストが高まると、利益を確保するためには、これまでと同じ価格では販売できません。ただ、この場合、消費者の需要が高まっているわけではないため、価格を引き上げると販売量が落ちたり、価格引き上げができずに企業収益を圧迫することになります。

日本の現状を見てみると、この生産コストが上昇しています。理由は多岐にわたりますが、新興国の所得増加や異常気象による農作物の減収などにより、特に生活必需品の価格が上昇しているのが特徴です。

そのため同じ商品を提供するのに以前より価格が上がっています。需要の増加による景気の回復を待たずに、物価だけが上がっている状態なのです。

日本で急速にインフレが進行している理由

日本において景気が上向かないまま物価が高まる状況は、ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、ますます進行しています。ウクライナの周辺国地域を含め輸送が滞ったことで、天然ガスをはじめとする資源の価格が上昇しました。

一方で、スムーズな生産活動ができない事態も起こっています。これまでより生産数が少なくなれば、需要が同じでも生産物を確保できにくくなることから、より高い値段を出してでも生産物を確保しようとする動きがでることで生産物の価格が上がり、インフレが進行していきます。

この物価上昇はコストの増加を引き起こしますが、現在の日本ではそれを製品の販売価格に転嫁しづらいため企業の業績を圧迫します。利益が横ばいもしくは減少傾向となっていることから、従業員の給料も据え置かれることになるのです。

スタグフレーションに陥るリスクが高まる

物価が上がっているのに給料は据え置きでは、生活必需品の買い物さえも思うようにできない消費者が増えていきます。作ったものが売れなければ、企業の収益悪化も免れません。

こうしてスタグフレーションに陥るリスクは高まっており、すぐに改善されるとはいえない状況です。何も対策しないでいると、たとえ給料の金額が下がっていなくても、個人の実質的な収入は減少し、生活水準が下がっていきます。

高まるスタグフレーションのリスクに対しては、個人による対策が必要なのです。

個人ができる対策は?

スタグフレーション発生のリスクが高まっている状況において、個人が選択できる有効な対策の一つが『投資』です。物価上昇はお金の価値を相対的に下げるため、価値の上がるものへ投資することで、資産のバランスを改善することが可能になります。

投資運用により資産を増やすことが重要

これまで1000円で買えたものが2000円に値上がりすると、お金の価値は1/2になったのと同じ状態です。このようにお金の目減りを防ぐには、物価の上昇と歩調を合わせて価格が上昇する可能性の高い商品へ投資しましょう。

物価上昇とともに価値が高まる商品に投資をすれば、資産価値を維持することが可能です。お金の価値が相対的に下がっていく局面では、相対的に価値が上昇する資産へ投資するのがよいでしょう。

スタグフレーションに強い運用資産

スタグフレーションでも価格が上がりやすい投資商品として、『金(ゴールド)』が挙げられます。金は経済状態が悪化した際に需要が高まりやすい資産です。

加えてインフレ時の物価上昇とともに金の価格自体も上がります。そのため経済停滞と物価上昇が同時に起こるスタグフレーションの局面において、需要と商品価格そのものの上昇が期待できる資産といえます。

『不動産』を所有するのもよいでしょう。賃料収入を期待する場合、経済の低迷がプラスに働くわけではありませんが、直ちに賃料が下がる事態にはならないためそこまで影響を受けません。一方でインフレ時には価格自体が上がりやすい投資商品でもあることから資産価値としてみると上昇が期待できます。

インフレにより価格が上がる『資源』も投資先候補の一つです。ただし深刻な経済悪化が起こると、資源価格が急落し、資産価値が激減するリスクもあるため注意しましょう。

まとめ

景気低迷と物価上昇が同時に起こる、スタグフレーションのリスクが高まっています。生産コストの上昇に伴う物価の上昇では企業の収益は増えないため、従業員の給料は据え置きです。

給料の金額が変わらなくても商品の値段が上がるため、買い物をできる量は少なくなります。対策をしなければ、生活水準はどんどん低下していくでしょう。

個人ができる対策としておすすめなのが、現物資産への投資です。金や不動産へ投資することで、お金の価値が減る状態でも資産を維持しやすくなります。

スタグフレーション発生時に相対的な資産価値を失うことがないよう、投資による資産運用を検討してみては如何でしょうか。

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