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養育費の相場はいくら?金額の計算方法や未払いを防止する方法

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養育費はいくらが相場なのでしょうか?計算方法をチェックし、まずは目安を確認しましょう。養育費をいつまで受け取れるのかも気になる点です。未払いが発生しないように予防する方法や、未払いが発生した際の対処法も見ていきましょう。

養育費の基礎知識

養育費は子どもが自立するまでの間に必要な費用です。養育費の相場を見ていく前に、まずは養育費がどのようなお金なのか確認します。

養育費とはどんなお金?

子どもが自立するまでには、衣食住といった暮らしを支える『生活費』のほか、『教育費』や『医療費』などが必要です。自分で働けない子どもの間は、親がこの費用を負担します。

離婚すると夫婦関係は終了しますが、子どもとの親子関係がなくなるわけではありません。親権を持っていなくても、親として子どもの養育費を払うのは当然の義務です。

親権を持っている監護者は養育費を受け取る『権利者』でもあります。一方、親権を持っておらず養育費を支払う義務を負う親が『義務者』です。

義務者には『生活保持義務』があり、子どもに自分と同じ生活レベルの暮らしをさせるべきとされています。そのために必要な養育費の金額は、権利者・義務者の年収によりさまざまです。

養育費の計算方法

離婚後の子どもの生活を維持するために必要な養育費は、家庭ごとに適切な金額が異なります。そのため厳密な計算により求めなければいけません。

ただし算出までに時間がかかっていては、その間の暮らしに支障をきたす可能性があります。そこで簡単に養育費の目安が分かる『算定表』もチェックしましょう。

養育費の金額を算定する方法

養育費を算定するには、まず義務者の『基礎収入』を計算します。義務者の生活のために必要な費用や、税金分を差し引いて計算する費用です。

次に子どもの『生活費指数』をチェックしましょう。生活費指数は親を100として、0~14歳の子どもが『62』、15歳以上の子どもが『85』です。続いて子どもの生活費を計算しましょう。

計算式は『義務者の基礎収入×{子どもの生活費指数÷(義務者の生活費指数+子どもの生活費指数)}=子どもの生活費』です。

この生活費をさらに下記の計算式に当てはめ計算すると、1年間の生活費が分かります。

『子どもの生活費×{義務者の基礎収入÷(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)}=1年間の養育費』

参考:養育費・婚姻費用算定表について|裁判所

算定表を活用する

紹介した計算方法から分かる通り、養育費の算定は複雑です。そのため手順通りに計算すると時間がかかります。スピーディーに算定を実施するために、『算定表』の使用が一般的です。

算定表を使い養育費を計算するときには、義務者の『年収』と子どもの『人数』『年齢』を使います。義務者の年収は会社員であれば税額控除前の金額を、自営業であれば課税対象の金額を用いる決まりです。

算定表には『裁判所』作成のものと、『日本弁護士連合会』作成のものの2種類がある点も知っておきましょう。

日本弁護士連合会作成の算定表の方が養育費が高く算出されやすい傾向ですが、長年の使用実績から裁判所作成のものを利用するケースが多いでしょう。

算定表はあくまで目安

複雑な養育費の算定を簡単にできるよう作られたのが算定表です。複雑な計算をしなくても、すぐに養育費の金額が分かります。

ただし算定表の金額はあくまでも『目安』です。子どもが自立するまでに必要な一般的な費用をもとに算出されているため、必ずしも個々の事情に即したものではありません。

例えば算定表では、進学先は全て公立を選ぶのが前提です。もし両親が子どもの進学先に私立を選んだとしたら、算定表の養育費のみでは足りません。

そのため算定表で求めた金額は、目安として参考にしながら両親で話し合わなければいけません。また算定表は子どもが3人のケースまでしかないため、4人以上子どもがいる場合は利用できない方法です。

養育費の相場

計算式や算定表で養育費を求めたとしても、実際にその金額を受け取れるとは限りません。算定表で分かる養育費の目安をチェックしましょう。

例として、義務者が会社員かつ権利者の年収を100万円として算定した金額を紹介します。加えて2018年の司法統計をもとに、実際に決まった養育費の金額も見ていきます。

子どもが1人の場合

まずは算定表をもとに、子どもが1人のときの養育費の目安を紹介します。

義務者の年収(万円) 子どもが0~14歳(万円) 子どもが15歳以上(万円)
100 0~1 0~1
200 1~2 2~4
300 2~4 2~4
400 4~6 4~6
500 4~6 6~8
600 6~8 6~8
700 6~8 8~10
800 8~10 10~12
900 10~12 12~14
1000 10~12 12~14

次に2018年の司法統計で発表されている、実際に決定した養育費の金額を見ていきましょう。子どもが1人のケースで、月額養育費を受け取ることに決まったのは8295件です。8295件のうち金額の内訳は下記の通りです。

  • 1万円以下:322件
  • 2万円以下:1131件
  • 4万円以下:3572件
  • 6万円以下:1863件
  • 8万円以下:678件
  • 10万円以下:327件
  • 10万円超:401件

実際に決まった養育費の金額は、4万円以下が最も多いと分かります。

子どもが2人の場合

子どもが2人いるケースでは、年齢の組み合わせが3通りあり、下記の通り養育費の目安が異なります。

義務者の年収(万円) 子どもが0~14歳(万円) 第一子が15歳

第二子が0~14歳以上

子どもが15歳以上(万円)
100 1~2 1~2 1~2
200 2~4 2~4 2~4
300 4~6 4~6 4~6
400 4~6 6~8 6~8
500 6~8 8~10 8~10
600 8~10 10~12 10~12
700 10~12 12~14 12~14
800 12~14 12~14 14~16
900 14~16 14~16 16~18
1000 16~18 16~18 18~20

また2018年の司法統計によると、子ども2人のケースで月額養育費を受け取ることになった件数は5828件です。内訳は下記の通りで、6万円以下の割合が子ども1人の場合より高くなっていると分かります。

  • 1万円以下:206件
  • 2万円以下:580件
  • 4万円以下:1897件
  • 6万円以下:1439件
  • 8万円以下:786件
  • 10万円以下:412件
  • 10万円超:507件

参考:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について | 裁判所
参考:司法統計 結果一覧 | 裁判所 – Courts in Japan

養育費はいつまでもらえる?

養育費は子どもが自立するまでに必要な費用ですが、いつまで受け取れるものなのでしょうか?成人年齢の引き下げによる影響についても確認します。

20歳までが目安

自立するまでの費用である養育費は、子どもが『20歳』になるまで支払われるのが基本です。ただしあくまでも20歳は目安のため、個々の状況に合わせ適切な年齢を設定するとよいでしょう。

両親が合意していれば、何歳まで養育費を受け取っても構いません。高校卒業後の進路次第でも受け取り期間は異なります。進路は子どもの希望によって急に変わる場合もあるでしょう。

必要があれば、当初取り決めていた養育費の受け取り期間を変更しても構いません。

高校・大学から社会人になる場合

20歳を迎えたとしても、子どもが大学に進学していれば、まだ自立しているとはいえないでしょう。そのため大学在学中は養育費を受け取るケースがほとんどです。卒業し社会人になった時点で、受け取りが終了します。

20歳に満たない18歳や19歳でも、高校卒業後に就職し社会人になっているとすれば、その時点で自立していると考えられるでしょう。

そのため当初決めていたのが20歳までの支払いだったとしても、両親の話し合い次第では、就職した時点で支払い終了となるケースもあります。

成人年齢引き下げは影響する?

2022年4月1日から成人年齢が18歳へ引き下げられます。成人年齢が法的に18歳になったとしても、それを根拠に養育費の支払い期間が18歳になるわけではありません。

既に取り決めされた支払い期間は有効のため、20歳と決めていたなら20歳まで養育費を受け取れます。これから取り決めを実施する場合も、18歳が目安になるわけではありません。

18歳で成人したとしても、高校生や大学生であれば自立しているとはいえないからです。例えば大学までの進学を考えているなら、支払い期間を『22歳になってから迎える3月』というように、具体的に設定しておくと安心です。

再婚した場合は支払いを中断される場合も

権利者が再婚すると、養育費が中断されるケースもあります。たとえ権利者が再婚したとしても、義務者と子どもの親子関係は変わりません。そのため養育費を受け取り続けられます。

ただし子どもと再婚相手が養子縁組を行うと、法律上の親子となり、再婚相手に子どもの扶養義務が発生します。この場合、養育費は中断、もしくは減額されるかもしれません。

ただし再婚相手に子どもの生活を保障するだけの経済力がない場合には、引き続き養育費を受けられます。

養育費の未払いを防ぐ方法

最初に取り決めをしておいても、養育費の未払いは起こり得ます。未払いになることなく毎月養育費を受け取るには、確実に支払ってもらえるよう予防が必要です。加えて未払いが発生した場合の対策もチェックしましょう。

合意内容を公正証書にしておく

話し合いの結果、養育費の金額や期間について合意したら、その内容を『公正証書』にしておくと未払いの予防につながります。特に裁判なしで強制執行が可能な『執行認諾文言付き公正証書』は強力です。

具体的には『義務者が養育費を支払わなければ、ただちに強制執行を受けても異議がないことを承諾する』という内容を設定します。

合意していてもいつ未払いが発生するか分かりません。あらかじめ公正証書にしておけば、未払いが発生しても対応しやすいはずです。

調停や裁判所で取り決める

両親の話し合いだけでは、養育費について合意できない可能性もあります。その場合には『養育費請求調停』を家庭裁判所へ申し立てましょう。

助言や相手への説得により、調停委員が話し合いをサポートしてくれます。そのため、2人だけで話し合うより建設的な内容になりやすいはずです。

3000~4000円の費用で申し立てできるため、経済的な負担も少なく済ませられます。調停が成立すれば、養育費の支払いを強制できるため、未払いの予防が可能です。

調停で話し合いがまとまらない場合には、審判へ移行します。審判になると話し合いではなく、家庭裁判所が養育費の内容を決定します。

万が一未払いが発生したら?

未払いが発生した際の対応は、公正証書や調停調書といった『債務名義』を取っているかどうかで違う点に要注意です。債務名義がある場合、養育費の支払いに応じてもらえないときには、強制執行を申し立てられます。

強制執行の申し立てをします、という内容の通知をするだけでも、未払いが解消するかもしれません。債務名義がないなら、改めて養育費について話し合いが必要です。

話し合いで合意した内容は、公正証書にしておきましょう。『養育費請求調停』を家庭裁判所へ申し立てる方法も有効です。

簡易裁判所から『支払督促』を出してもらう方法もあります。養育費の取り決めを書面にまとめていれば利用可能な制度です。支払督促到着後2週間以内に異議申し立てがなければ、債務名義を取得でき強制執行できます。

まとめ

養育費の相場を見てみると、子どもが1人なら4万円以下が多いと分かります。子どもが2人の場合には、4万円以下と6万円以下が多い傾向です。

算定表を見てみると、義務者が年収300万~400万円であれば、養育費は4万円ほどが目安となっています。一般的な会社員の元パートナーから養育費を受け取るには、約4万円が目安といえるでしょう。

この養育費は、子どもが自立するまで受け取れます。目安は20歳ですが、進学や就職の状況に合わせて設定しましょう。状況に応じて変更も可能です。

未払いが発生する可能性に備え、合意した内容を公正証書にしておくのも有効です。当人同士のみでは合意が難しければ、家庭裁判所へ調停を申し立てる方法もあります。

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