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年金を払わないとどうなる?差し押さえリスクや免除申請について解説

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年金を払わないままでいると、延滞金の支払いを課され、最終的には財産を差し押さえられる可能性もあります。今すぐ支払うのが難しいなら、免除制度の利用を相談しましょう。受け取る年金額を満額に近づけるための追納についても紹介します。

年金を支払わないとどうなる?

病気やけがなどさまざまな理由から経済的に苦しく、年金を支払えないタイミングもあるでしょう。年金をずっと支払わずにいると、どのような結果になるのでしょうか?

将来的にもらえる金額が減る

年金を支払わない期間があると、受け取れる年金額が減ります。国民年金の保険料を480カ月分満額支払うと、令和3年度時点で受け取れる年金額は年『78万900円』です。

支払うべき保険料を支払っていない場合には、満額は受け取れません。例えば36カ月の未納期間があると、年6万円近くも年金額が減る試算になります。

加えて年金額は一生涯減ったままです。国民年金を20年間受け取る間ずっと年6万円少なければ、満額受け取るケースと比べ120万円も受け取れる金額が少なくなります。

遺族年金・障害年金がもらえない

国民年金を支払っていると、被保険者が死亡したときに遺族に支払われる『遺族年金』や、病気やけがで障害を負ったときに受け取れる『障害年金』も対象となります。

保険料を支払っていないと、遺族年金も障害年金も受け取れません。もしものときに備える最低限の保障がない状態になってしまいます。

加えて、支払っていない期間は国民年金の加入期間としてカウントされません。将来年金を受け取るには、20~60歳の間に10年以上の加入期間が必要です。支払わないと、年金をまったく受け取れないという事態も起こり得ます。

年金の督促状を無視するとどうなる?

年金をずっと支払わずにいると『督促状』が届きます。督促状が届いてもそのまま放置していると、延滞金を支払わなければならず、最終的には財産を差し押さえられるかもしれません。

延滞金を余計に払うことになる

督促状を無視し続けていると、延滞金を支払う必要があります。ただしすぐに延滞金を支払わなければいけないわけではありません。

まず督促状が届くのは、保険料の支払いができる経済力があるにもかかわらず、支払いの意思がなく保険料が支払われない場合です。

加えて、督促状で指定されている期限を過ぎて保険料を支払うときには、年2.4~14.6%の延滞金がかかります。

財産調査と差し押さえ

さらに年金保険料の支払いを延滞し続けると、『財産調査』と『差し押さえ』が行われます。保険料を支払っていない本人はもちろん、世帯主や配偶者の財産も対象です。

財産調査は、預貯金にとどまらず不動産・家財・売掛金にも及びます。生活に必要なものを差し押さえられることはないものの、それ以外の財産は差し押さえられ収納される流れです。

日本年金機構の発表によると、2018年に差し押さえの対象となったのは『年間所得300万円以上』『未納期間7カ月以上』の条件を満たしている人でした。以前より基準が引き下げられ対象者が増えています。

財産差し押さえまでの流れ

保険料を支払わずにいると、最終的には財産を差し押さえられることが分かりました。ただし1カ月分の保険料を払い忘れていたからといって、すぐに差し押さえられるわけではありません。財産差し押さえまでの流れを見ていきましょう。

納付督励・特別催告状が送られてくる

年金保険料の支払い期限は翌月末日までです。例えば2022年2月分の保険料であれば、2022年3月末日までに支払います。この納期限までに保険料を支払わない場合、まず実施されるのは『納付督励』です。

年金事務所からは、保険料を支払うよう封書やはがきで通知されます。電話がかかってくる場合や、自宅を訪問される場合もあるでしょう。それでも応じないときには『特別催告状』が送付されます。

最終催告状・督促状が送られてくる

年金事務所からの連絡や特別催告状を無視し続けて2年ほどすると、『最終催告状』が送られてきます。この時点であれば、分割による納付や猶予の申請もできます。

最終催告状を無視すると、日本年金機構は『支払いの意思がない』とみなします。これまでの連絡では自主的な納付を求めてきましたが、次に行われるのは督促です。法律にのっとって滞納処分が行われます。

まず所得の調査により、支払い能力の有無が判断されます。支払い能力があると判断されれば『督促状』が送付される流れです。督促状の期限までに納付すれば、延滞料金はかかりません。

しかしこれ以降は延滞料金が増え続けます。

差押予告通知書から差し押さえへ

督促状が届いても無視し、期日までに保険料を納付しない場合、『差押予告通知書』が届きます。預貯金や不動産などの財産を差し押さえる前に送付される通知です。

差し押さえが実行されると、手取り収入の1/4までが徴収されます。さらに33万円を超える部分は全て徴収される決まりです。家や自動車なども差し押さえの対象です。

事前に同居者の分も含め財産調査が行われているため、財産を隠し通すのは難しいでしょう。

今すぐ支払いが難しい場合の対処法

支払えないからと督促状を始めとする通知を無視していると、法律に従い財産を差し押さえられる可能性があると分かりました。

しかし経済的に苦しい状況では、年金保険料を支払い続けられないでしょう。そのようなときに役立つのが『免除制度』や『猶予制度』です。

免除制度・納付猶予制度を活用する

免除制度を利用すると年金保険料の免除を受けられます。制度を利用できるのは、前年の所得が一定額以下のケースや、失業中の場合です。

また『納付猶予制度』は20歳から50歳未満の人で、前年所得が一定額以下の人が利用できます。保険料の納付時期を待ってもらえる制度です。どちらを利用する場合にも、申請書を提出し承認されなければいけません。

免除や猶予を受けている期間は、保険料の滞納をしている期間とは異なります。滞納中の期間は受給資格期間を計算するときに算入されませんが、免除や猶予の期間は算入可能です。

また免除や猶予期間であれば、遺族年金や障害年金を受け取れます。

免除制度の種類

申請を行うときには、まず自分が免除制度の要件に当てはまるか確認します。要件に当てはまっていれば制度の利用が可能です。

経済状態によって、下記4種類のうちどれが適用されるかは異なります。2021年度に制度を利用した場合の保険料もチェックしましょう。

  • 全額免除:保険料0円
  • 3/4免除:納める保険料4150円/月
  • 半額免除:納める保険料8310円/月
  • 1/4免除:納める保険料1万2460円/月

免除制度・猶予制度を活用できる条件

免除制度を利用できるのは、保険料の納付義務がある本人・配偶者・世帯主全員の前年所得が基準を下回っているときです。例えば本人の所得は基準以下でも、世帯主の所得が基準を上回っていると利用できません。

4種類の免除の所得額の基準は以下の通りです。

  • 全額免除:(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
  • 3/4免除:88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
  • 半額免除:128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
  • 1/4免除:168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

一方、猶予制度の対象となるのは、本人と配偶者の所得が基準以下の人です。そのため世帯主の所得が高く対象外の人でも、猶予制度なら利用できる可能性があります。

猶予制度は所得が『(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円』で求められる金額以下であることが要件です。

年金の相談窓口も知っておこう


年金保険料の支払いができず差し押さえにまで発展するのは、支払いはもちろん相談もせず放置していた場合です。あらかじめ相談していれば、差し押さえの前に対処できます。保険料の支払いについて相談できる窓口を知っていると役立つはずです。

年金事務所または年金課

まずは『年金事務所』か役所の『年金課』へ行きましょう。支払いが難しいと感じたときにすぐ相談に行けば、免除制度や猶予制度の申請について詳しく教えてもらえます。

経済的に苦しいからと保険料を支払わずにいると、将来的には差し押さえ処分の対象です。あらかじめ相談し猶予制度を利用していれば、差し押さえのリスクを避けられます。

年金について相談に行くときには、『年金手帳』といった基礎年金番号の分かるものと『本人確認書類』を持参するとスムーズです。

街角の年金相談センター

『街角の年金相談センター』に相談してもよいでしょう。運営しているのは日本年金機構ではなく、委託されている全国社会保険労務士会連合会です。

相談をする際には予約をします。基本的に平日の日中ですが、中には平日の夜や週末に相談できる場所もあるため確認しましょう。また電話相談は実施していません。

相談に行くときには、年金事務所や年金課を訪れるときと同様、基礎年金番号の分かるものと本人確認書類を持参しましょう。

年金は後から支払うことも可能


免除制度や猶予制度を利用すると、その期間中も受給資格期間として計算されます。しかし年金額には反映されません。そのため国民年金の受取額を満額に近づけるには『追納制度』を利用しましょう。

年金の追納制度について

追納制度は免除制度や猶予制度の利用で払っていない分の保険料を、後から納付する制度です。産前産後期間の免除制度を除き、免除・猶予を受けた期間は将来受け取る年金額に反映されません。

そのため年金額が満額より低くなってしまいます。年金額をできるだけ増やすには、追納で免除や猶予を受けている期間の保険料を支払いましょう。

追納するには『国民年金保険料追納申込書』を年金事務所へ提出します。直接足を運んで提出してもよいですし、郵送でも受け付けている手続きです。厚生労働大臣から承認されると納付書が送付されます。

追納の注意点

保険料の納付は後からでもできますが、追納が承認された月から『10年以内』の免除期間に限定される点に注意しましょう。10年以上経過していると、追納したくてもできなくなってしまいます。

加えて追納する時期が納付猶予を受けた翌年度から『3年度目以降』の場合、経過期間に応じた『加算額』が上乗せされる決まりです。納付する保険料が増えるため、追納は早めに実施しましょう。

また老齢基礎年金を受給できる人は追納できません。

まとめ

年金を払わないまま放置していると、最終的には財産を差し押さえられてしまいます。納付が難しいと感じたなら、早めに年金事務所や役所の年金課へ相談し、免除制度や猶予制度の利用を申請しましょう。

制度を利用するとその期間は年金の受取額に反映されませんが、受給資格期間には算入されます。経済的に余裕が出てきてから保険料を納付する追納も、追納の承認から10年以内の免除・猶予であれば可能です。

差し押さえされる事態に陥らないよう、早めに相談しましょう。

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