株式投資にかかる税金。確定申告や非課税で運用する方法についても
公開日: 最終更新日:※この記事は2021年11月30日時点の内容となります。最新のNISAに関してはこちらの記事をご参照ください。
株式投資で利益が出た場合、納税の義務が生じます。税金の仕組みを理解しないまま資産運用を行うと、必要以上の税金を支払う可能性があるので注意が必要です。株式投資にかかる税金の仕組みや、節税対策について解説します。
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株式投資にかかる税金の考え方
株式投資を行う場合、得た利益には税金がかかります。 税金を納付しないと、脱税で告発されたリ、重い追徴課税が科せられるケースもあります。どのような形で課税されるのか、まずは株式投資にかかる税金に対する考え方を見ていきましょう。
主に売却して利益が出たとき課税される
株式投資における税金は、株を売却して得た『譲渡所得』に対して、税率20.315%の申告分離課税として課されます。譲渡所得の額はその年に株式の売却で得た利益から、購入代金や購入にかかった手数料を差し引いた金額です。
購入時よりも保有株が値上がりして出ている利益は『含み益』といい、税金は課せられません。株を売却した段階で初めて実利となり、税金が課せられるのです。
株の売買で利益を得たいと思っているなら、譲渡所得にかかる税金も考慮して売るタイミングを計る必要があります。
参考:No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)|国税庁
損益通算ができる
売却で利益を得るたびにそのままの金額に課税されて、損失が出ている時には単に課税されないだけでは、投資で利益を出すことは非常に難しくなってしまいます。そうならないように譲渡所得利益と損失を相殺するのが『損益通算(そんえきつうさん)』です。
例えばA株を10万円で購入し、15万円で売却したとします。一方で、B株を10万円で購入したものの、株価が下がり5万円で売却したケースを考えましょう。
A株では5万円の利益が出ていますが、B株では5万円の損失です。損益通算をしなければA株の5万円がまるまる課税対象になります。しかし損益通算をすれば、相殺されてプラスマイナス0なので税金はかかりません。
損益通算は課税口座を複数持っている場合、他の口座とあわせて計算することも可能です。ただしその場合、確定申告によって損失をあらかじめ国に申告しておかなければなりません。
損益がマイナスのときは繰越控除
上場株式への投資で当年に赤字が出ていた場合、損失を翌年に繰り越して翌年の利益から控除することが可能です。赤字の繰越を『繰越控除』といいます。
当年に出た50万円分の赤字を繰り越せば、翌年60万円の黒字となった場合でも50万円分が控除されるのです。繰越控除を行わなければ60万円だったはずの課税対象額が、10万円まで下がります。
繰越控除は最長で3年分まで可能です。なお繰越控除を適用するためには、確定申告を行わなければなりません。
参考:No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除|国税庁
口座の種類で手間や税金が変わる?
証券口座には、特定口座と一般口座の2種類があります。口座を開設する際には、どちらかの口座を選ばなければなりません。加えて特定口座から『源泉徴収の有無』も選ぶ必要があります。
それぞれの口座の違いや、どちらの口座の方が税金がお得か・手間がかからないかを解説します。
特定口座、一般口座の特徴
特定口座と一般口座とは、それぞれ以下のような口座です。
口座の種類 | 特 徴 |
特定口座 | 金融機関が株式をはじめとした金融商品を保有するために用意してくれる口座 |
一般口座 | 特定口座やNISA口座で管理していない、投資家本人が上場株式等を管理するための口座 |
それぞれの機能的な違いは、特定口座は金融機関が譲渡所得を計算してくれるのに対し、一般口座は口座を利用している個人で譲渡所得を計算しなければならないという点です。
特定口座では『源泉徴収あり』『源泉徴収なし』を選択する必要がありますが、一般口座では選択の必要がありません。
「特定口座 源泉徴収あり」は確定申告不要
特定口座の中でも『源泉徴収あり』を選んだ場合、確定申告が不要となります。確定申告ならびに納税を証券会社が行ってくれるからです。
ただし、繰越控除を利用したい場合は確定申告をする必要があります。特定口座を持てばどのようなケースでも確定申告が不要というわけではありません。
繰越控除を使いたい場合は、『特定口座年間取引報告書』を交付してもらい確定申告をしましょう。別の証券口座や一般口座と損益通算をしたい場合も、確定申告をしなければなりません。
取引額が少なければ「特定口座 源泉徴収なし」がお得?
『源泉徴収あり』は便利ですが、大きな欠点があります。本来であれば課税されない年間20万円以下の利益にも課税され、税金が引かれてしまうという点です。
株式の売却で得る利益が20万円までに収まる可能性が高いなら、『源泉徴収なし』を選択して自分で納税した方が得になります。
投資で得た利益が年間20万円以下の場合はそもそも申告自体が不要であり、特定口座で『源泉徴収なし』を選べばば課税されることはありません。
年間20万円を超える利益が出た場合は自分で確定申告をしなければなりませんが、証券会社が作成する特定口座年間取引報告書を使って手続きを簡略化できます。個人で行う確定申告よりもはるかに簡単です。
配当金は課税される?
譲渡所得に関しては課税対象となり、場合によっては確定申告をしなければなりません。ただ配当金の場合は扱いが変わってきます。配当金にかかる税金について、詳しく解説していきます。
原則、配当金は税金が引かれて入金される
譲渡所得に関しては税金を改めて支払う必要がありますが、基本的に配当金には受け取った後の納税義務はありません。配当金の場合、基本的に税金が引かれた金額を入金されるためです。
配当金にも譲渡所得と同様に20.315%の税金が課せられていますが、すでに引かれた金額が口座に入金されます。譲渡所得と違って受け取った段階で課税対象になることはなく、確定申告なしでも問題ありません。
ただ、税制上のメリットを享受したい場合は確定申告が必要になります。
確定申告を行うなら受ける特例によって、総合課税(その年の全ての所得を合計して課税対象とすること)か申告分離課税(他の所得と切り分けて計算すること)を選択します。
配当金も譲渡損失と損益通算が可能
配当金は譲渡損失との損益通算が可能です。配当金からは一度税金が引かれて入金されますが、損失も考慮すれば税金を払いすぎていると判断され、還付が発生します。
自動的に譲渡損失と配当金の損益通算が行われるのは、源泉徴収と配当金の受け入れで『あり』を選択した特定口座で、『株式数比例配分』で配当金を受け取っている場合です。
『源泉徴収なし』を選択している場合は、譲渡損失との損益通算は基本的に自分で行います。確定申告をして支払いすぎた税金の還付を受けましょう。
NISAの活用で約20%の税金を節約
株式投資にかかる税金を抑える方法として、『NISA(ニーサ))』の活用は有効です。NISA口座の利用によってどのようなメリットがあるのかを解説します。
譲渡益や配当金が一定期間非課税になる
『NISA』は投資で得た利益に対して、通常なら約20%かかる税金を非課税にする仕組みです。
NISAには一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAの3種類があり、それぞれに上限や投資できる期間が異なります。成人が株式投資に使えるのは一般NISAです。
一般NISAの口座を活用した場合、最大で年間120万円の非課税投資枠が設けられています。非課税投資枠の120万円で購入した金融商品で得た利益は、最長5年間税金がかかりません。
2023年で一般NISAは終了し、2024年1月からは新制度がスタートしました。新制度では「つみたてNISA」の名称は「つみたて投資枠」へ、非課税の年間投資上限額が年120万円となり、非課税保有期間も無期限となりました。
ただし、NISA口座では損益通算が適用されない点には注意しましょう。損益通算ができるのはあくまでも課税口座の中か、課税口座同士のみです。
参考:NISAとは?|金融庁
配当金は受け取り方で課税、非課税が分かれる
NISAには損益通算ができない他にも注意点があります。非課税を適用するためには、配当金の受け取り方として、証券口座で受け取る『株式数比例配分方式』を用いなければならない点です。
指定した銀行口座で受領する方式や、ゆうちょ銀行や郵便局で配当金領収書で受け取る方式の場合、一般口座や特別口座と同じく配当金に課税されてしまうので注意しましょう。
また、NISA口座を開設する以前に保有していた資産については課税対象です。株式で得た利益に非課税枠を使いたいなら、口座を開設した後に新規で取引する必要があります。
まとめ
株の売却益(譲渡所得)や配当金にかかる税金は、利益に対して20.315%です。税金を支払う手間は特定口座か一般口座かで大きく変わります。
投資を行う場合、基本的には特定口座の方が確定申告の手間もかかりません。特別な理由がなければ特定口座を選んだ方がよいでしょう。
株式投資での節税対策としては、損益通算や繰越控除を適用する方法があります。選ぶ口座の種類によって確定申告をしなければならないケースもあるので、制度を改めて確認しましょう。
少額投資を考えているなら、NISA口座を使うのも節税対策の選択肢です。かかる税金をできるだけ減らす工夫も、投資を成功させる大きなポイントといえます。