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貯金はいくらあれば安心?貯金だけでなく資産運用も考えよう

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マイホーム資金・教育資金・老後資金は、人生の三大支出といわれています。これらの支出をカバーするには、貯金はいくらあれば安心なのでしょうか?必要な金額を考慮しつつ、用意すべき金額を見ていきましょう。併せて資産運用の重要性も確認します。

たくさん貯金していれば安心?

大きな支出や万が一の出来事に備えるには貯金が必要です。しかし貯金があれば絶対に安心なのでしょうか?

十分なお金を備えていると思っても、本当に必要な資金がいくらか分からなければ安心感を得るのは難しいでしょう。知識を得ることで、安心感が増すと考えられます。

みんなはいくら貯金しているの?

貯金はあるに越したことはありません。では、どのくらい貯金をしているのが一般的なのでしょうか?『家計の金融行動に関する世論調査』を基に、金融資産を保有している世帯の貯金の中央値を、世代別に確認します。

中央値とは、データの大きさの順に並べたときに、中央に位置する数値です。

  • 20代:201万円
  • 30代:400万円
  • 40代:531万円
  • 50代:800万円
  • 60代:1,400万円
  • 70代:1,500万円

順調に貯金をしている世帯では、貯金用の口座を生活費用の口座と分け、『先取り貯金』をしている場合が多い様です。給料を受け取ったら、最初に決まった金額を毎月貯金用の口座へ移動するため、確実に貯められる方法です。

参考:家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)

お金があれば安心感は得られる?

十分な貯金があれば、心に余裕を持てます。例えば病気やけがによる入院や、冠婚葬祭のご祝儀や不祝儀など、突然の出費が必要な場合にも、生活費を切り崩すことなく対応が可能です。

ただし、いざというときへの備えが万全であっても、単にお金があるだけでは安心とは言い切れません。

そこで知識も身に付けておくとよいでしょう。例えば高額な医療費を負担しなければいけない場合でも、活用できる制度を知っていれば、必要な資金の目安が分かるため「この貯金額で足りるだろうか?」と不安に思う気持ちを軽減できるはずです。

お金と同時に知識も蓄えることで、より安心感が高まります。

リスクに備えるための貯金

万が一の事態として想定される『病気』や『失業』のリスクには、いくら貯金があるとよいのでしょうか?リスクに備える貯金については、受け取れるお金についても知った上で準備するとよいでしょう。

病気になるリスク

病気になるリスクに備えるには、必要なときに治療が受けられるよう、数万円の治療費を用意しておく必要があります。初期の段階で治療すれば、治療期間は短く、費用もそれほどかかりません。

また手術や入院によって高額な医療費が必要になった場合には、『高額療養費制度』の活用が可能です。手続きをして制度を利用すれば、100万円を超える医療費を請求されたとしても、実際の負担は数万円~十数万円に抑えられます。

失業のリスク

失業し収入が途絶えるリスクにも備えましょう。けがや病気で働けなくなると、4日目以降から『傷病手当金』を利用できます。業務中や通勤中に発生したけがや病気が原因であれば『休業補償給付』や『休業給付』の対象となります。

加えて病気やけがで働けなくなり一定の障害が残った場合、初診日から1年6カ月が経過すると『障害年金』も支給されます。併せて年金やその他の制度を利用しても、最低生活費より収入が低い場合、『生活保護制度』の利用も可能です。

仕事を辞めると雇用保険の『失業給付』も受けられます。ただし自己都合退職の場合、給付が始まるまで3カ月近くかかる可能性がある点に要注意です。

これらを踏まえ失業のリスクに備えるには、制度や年金による支給額の不足分や、失業給付の受け取り期間が始まるまでの生活費を計算し、貯金するとよいでしょう。

大きな出費に備えるための貯金

ライフステージの変化に伴い、大きな出費が必要なタイミングがやってきます。例えば『住宅資金』や『教育資金』です。数百万円・数千万円という大金が必要なため、少しずつ用意しておかなければ、必要なときにお金が足りない事態も起こり得ます。

住宅資金

マイホームを購入する場合、ほとんどの人は住宅ローンを利用します。ただし住宅ローンを利用したとしても、頭金を用意しなければならないケースがほとんどです。

加えて、仲介手数料や登記費用などの諸費用も用意しなければいけません。不動産会社へ支払う仲介手数料は、国土交通省の告示によって以下の通り料率の上限が定められています。

  • 売買価格200万円以下:売買価格×5%+消費税
  • 売買価格200万円超400万円以下:売買価格×4%+2万円
  • 売買価格400万円超:売買価格3%+6万円

料率を基に計算すると、購入価格3,000万円の住宅にかかる仲介手数料は最大で96万円です。消費税も加えると105万6,000円となります。

住宅購入費用の全額を住宅ローンで賄わないのであれば、頭金や諸費用として数百万円は貯めておかなければいけません。

教育資金

子どもの教育資金も大きな出費の一つです。1年間にかかる教育費は、公立の場合では幼稚園約22万円・小学校約32万円・中学校約48万円・高校約45万円です。

また日本政策金融公庫の調査によれば、高校入学から大学卒業までにかかる教育資金の累計金額は以下の通りです。

  • 国公立:748万1,000円
  • 私立文系:965万7,000円
  • 私立理系:1,070万4,000円

およそ1,000万円が目安、と高額ですが、子どもが小さいうちから貯めておけば資金を作る時間は十分にあります。まずは児童手当を全額貯金に充ててもよいでしょう。

ただし必要な教育資金は進学先によって異なります。平均的な金額だけでなく、子どもの希望も考慮した資金プランの設計が必要です。

なお、高校や大学の学費を支援する奨学金制度を利用すると、教育資金の負担を大きく減らせます。

参考:令和3年度子供の学習費調査の結果を公表します

参考:子供1人当たりにかける教育費用(高校入学から大学卒業まで)は減少 ~令和3年度「教育費負担の実態調査結果」~

リタイア後に必要なお金を計算

老後資金も大きな支出の一つです。どのくらいの費用がかかるのか知るために、まずは1カ月にかかる生活費や、老後の期間をチェックしましょう。今後増加傾向が予想される医療費や、介護費用についても把握すれば、必要な費用を備えられます。

1カ月の生活費はいくら?

リタイア後の生活費として用意すべき金額は、『(老後の1カ月の生活費-収入)×退職後の年数』で計算します。まずは1カ月の生活費を把握するとよいでしょう。

生命保険文化センターの『生活保障に関する調査』によると、『夫婦2人が老後を過ごすために、日常生活費として月々最低いくらぐらい必要か』という質問で寄せられた回答の平均は『月22万1,000円』でした。ただしこの金額には、レジャーや趣味にかける費用は含まれていません。

旅行や趣味を存分に楽しむ老後を過ごすなら、『36万1,000円』は必要と考えられています。老後にどのようなライフスタイルで過ごすのか考え、1カ月の生活費にどのくらい必要かシミュレーションしてみましょう。

参考:2022(令和4)年度生活保障に関する調査

「老後」の期間は?

老後資金として備えるべき金額は、いつから老後を過ごすかによっても異なります。平均寿命から勤務先の定年退職年齢を差し引いて計算すると、おおよその老後期間の予測が可能です。

日本の企業の多くは60歳定年制のため、平均寿命との差を計算すると以下の通りです。

  • 男性:平均寿命81.64歳−60歳=21.64年
  • 女性:平均寿命87.74歳−60歳=27.74年

ただし定年の年齢は世界的に見て引き上げられつつあります。日本でも2025年4月から65歳までの雇用確保が義務付けられますし、70歳までの就業機会の確保は既に努力義務となっています。

一方、定年を迎えるよりも早くリタイアを希望する人もいます。そのため、それぞれの老後期間の目安を知っておくことが重要です。

今後、医療費負担が増える可能性は?

今後増えていく可能性のある負担も、考慮しなければいけません。高齢者の医療費の自己負担は、以下の通り年齢によって現役世代より軽減されています。

  • 70歳未満:3割
  • 70~74歳:2割
  • 75歳以上:1割

ただし70歳以上であっても現役並み所得者は3割となっています。さらに少子高齢化がこのまま進行していけば、自己負担の割合が増えていくでしょう。老後の準備を考え始めた現役世代は、医療費負担の増加分を考慮し、資金を用意する必要があります。

介護費用はいくら?

健康状態によっては、介護費用も負担しなければいけません。要介護認定を受ければ、介護保険を使い、訪問介護や通所リハビリ・特別養護老人ホームへの入所といったサービスを受けられます。

ただし介護保険を使用しても、費用負担が0円になるわけではありません。公益財団法人生命保険文化センターの調査よれば、介護目的のリフォームや介護用品にかかる一時的な費用は平均74万円かかり、継続的にかかる費用は平均で月8万3,000円です。

自分自身の介護費を用意するのはもちろん、現役時代においても親の介護費用の不足分を補う必要があるかもしれません。

参考:2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査|生命保険に関する全国実態調査|調査活動|公益財団法人 生命保険文化センター

老人ホームに入る場合

老人ホームへの入所を検討する場合には、資金の確保が課題となります。年金だけでは入所に必要な費用を支払えない可能性もあるため、貯金で備えておくことが重要です。

生活の拠点が老人ホームに移るため、自宅の売却などを検討してもよいでしょう。地域によっては、自宅を担保に借り入れをする『リバースモーゲージ』を利用できるかもしれません。

そのほかに、株式の配当やアパート経営などから収入を確保する方法もあります。同時に、老人ホームの入所にかかる費用が安いエリアを選ぶのもポイントです。

老人ホームの月額費用はエリアによってばらつきはありますが、大都市圏は高くなる傾向があり、月額30万円~50万円台が多くなっています。また月額費用とは別に500万円~1000万円の入居金を支払う必要がある場合もあるので立地やサービス内容を踏まえた上で選択するようにしましょう。

老後の主な収入

リタイアしたからといって、収入がまったくなくなるわけではありません。代表的な収入は『年金』と『再就職後の給与』です。受け取れる金額の目安を知ることで、貯金で用意しておかなければいけない老後資金のおおよその目安が分かります。

年金

国民年金に加入していると、65歳から『老齢基礎年金』を受け取れます。保険料を満額支払うと、1カ月の金額は2022年度時点で『6万4,816円』です。自営業などで夫婦ともに国民年金のみに加入していた場合、2人分で1カ月に『12万9,632円』支給されます。

会社員であれば給与から厚生年金の保険料も差し引かれているため、老齢基礎年金に加え『老齢厚生年金』も支給対象です。平均的な収入の会社員だった夫と専業主婦の夫婦であれば、2人分で合計『21万9,593円』の年金を受け取れます。

詳しい年金額は、試験運用が始まった『公的年金シミュレーター』を利用すれば確認が可能です。ただし年金額は毎年調整されており、今後も減少傾向が続くと予想されます。

参考:令和4年4月分からの年金額等について|日本年金機構

再就職後の給与

定年退職後も再就職して働くことで、収入を確保できます。ただし再就職後の給与は現役時代と比べ大きく下がるのが一般的です。100万円以上の減額になるケースもあるため、給与だけではこれまでの生活水準を維持できない可能性もあるでしょう。

再就職して働く場合、受け取れる年金は『在職老齢年金』です。在職老齢年金は厚生年金に加入しながら受け取れる年金ですが、賃金と年金額の合計が月に47万円を超えると支給が停止されます。

また47万円に満たない場合でも、段階的に金額が制限されるため注意が必要です。

「お金を貯めて老後に取り崩す」は危険?

十分な老後資金を貯め、リタイア後に取り崩しながら生活するスタイルは、状況によっては破綻する可能性があります。いつ寿命を迎えるのかは誰にも分からず、普通預金に預け入れておくだけでは、物価上昇時に価値が目減りする可能性があるからです。

自分の寿命は分からない

老後の期間は平均寿命から退職年齢を引くことで目安を計算できます。しかし平均寿命はあくまでも平均にすぎません。健康状態によっては、平均より長く生きる可能性も十分あるでしょう。

100歳以上の高齢者は2021年時点で『8万人』を超えており、今後も増加傾向が見込まれます。平均年齢であれば老後期間は20~30年ですが、100歳を超えて生きるとなると40年近く老後を過ごす可能性も考えられます。

老後がいつまで続くか分からないにもかかわらず、預金を取り崩すという対策だけでは消極的すぎるでしょう。老後資金としてまとまったお金が手元にあるなら、一部を運用に回し、資産を増やす方法も検討するのがおすすめです。

普通預金だけでは安心できない

普通預金口座に老後資金を全額入金している場合、利息はほとんど付きません。1,000万円預けているとしても、1年間に1万円です。

低金利が続く中で物価上昇が起これば、預金は増えないのに生活にかかる費用は増加します。例えば1杯200円のコーヒーが250円に値上がりすると、1,000円で5杯買えていたものが4杯しか買えなくなってしまいます。

1,000円の価値がコーヒー5杯分から4杯分へ目減りしたともいえるでしょう。生活に必要な物資の値段が全て上がった場合、十分な金額だと考えていた老後資金が足りなくなる恐れもあります。

資産を運用する考え方が必要

単にお金を普通預金口座に預けておくだけでは、将来的に資金が不足する可能性があると分かりました。その対策として資産運用を検討しましょう。

投資の重要性

物価上昇が懸念される中、単に貯金だけで備えるのは老後の安心にはつながりません。そこで重要なのが、投資による資産運用です。

日本はアメリカと比べると、投資による家計の金融資産の伸び率が低い傾向にあります。両国の資産構成を見ると、日本では預金の割合が54.3%なのに対し、アメリカでは13.3%と低い数値です。

アメリカでは、より多くの資金を投資に充てているため、大きなリターンを得ているといえるでしょう。一方、日本では、株式を保有しているのは全世代の平均で36.1%にとどまっています。投資信託を保有している比率は27.3%にすぎません。

資金を投資に回して資産運用することで、金融資産の増加が期待できます。

参考:資金循環の日米欧比較|日本銀行調査統計局

参考:家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)

投資を始めるのに必要な貯金

投資を始めるには、まとまった貯金が必要と考えている人もいるかもしれません。資産運用時の精神的な余裕を考えるなら、余裕資金は豊富にあった方がよいでしょう。

しかし貯金を全額投資に充てる必要はありません。月数千円から始める『積立投資』に取り組めば、無理のない範囲で投資を始められます。

積立投資では、毎月一定額の投資商品を買い増していくため、購入時期をずらすことによるリスク分散効果を期待できます。長い時間をかけることで、リスクを抑えつつ取り組める資産運用です。

積立投資のやり方と効果

少額から始められる積立投資は、まとまった貯金がなくても始められる投資方法です。また手軽に始められる『トラノコ』もおすすめです。

少額からコツコツ積み立てる

積立投資は少額から取り組めるのがポイントです。例えば月5,000円からでも始められます。5,000円なら通勤途中に買うコーヒーをやめ、マイボトルを持ち歩くだけで作れる金額です。

この5,000円を年利4%で10年間運用したとします。すると運用結果は73万6,249円と試算されます。5,000円を普通預金に貯め続ける場合は約60万円になるため、10年間で13万円以上の利益を得られます。

毎月の投資金額に迷う場合

より手軽に積立投資を始めるなら、トラノコを利用するとよいでしょう。スマホにアプリをインストールすれば始められます。3種類のリスクの異なる投資信託から選び購入するだけのため、初心者でも比較的簡単です。

また買い物のおつり情報を蓄積し投資に充てられる『おつり投資』や、ANAマイルやnanacoポイントなどを使った『ポイント投資』も選べます。この方法であれば、まとまったお金を入金する必要がないため、より始めやすいでしょう。

生活しながら無理なく資産形成を目指せるため、少ない貯金額や元本割れしている状態を過度に気にせず投資に取り組めます。お金を増やす方法の一つとして取り入れることで、安心感につながるはずです。

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まとめ

貯金は安心につながりますが、普通預金口座に預けていれば十分とは言い切れません。特に物価上昇の傾向が見られる場合、金利が思うように上がらなければ、資産が目減りしてしまいます。

老後資金を考えた場合、自分の寿命は分からないため、貯金を取り崩すだけでは不安が残るという点にも要注意です。そこで、積極的に資産を増やすための投資が重要といえます。

投資の割合を増やすことで、資産の増え方を加速させることができるかもしれません。初心者が取り組むなら、少額から始められる積立投資がよいでしょう。投資アプリのトラノコを活用すれば、より手軽に始められます。

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