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税金が高いと感じたら?会社員がすぐに実践できる「税金を抑える方法」を紹介

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会社員の方は毎月の給与から税金や社会保険料が天引きされています。基本的にこれらの税金や社会保険料は収入(所得)に応じてかかりますが、「給与は変わっていないはずなのに手取り金額が減ってしまった」「天引きされる税金が高くなった」と感じている方もいるのではないでしょうか。

今回は給与から天引きされる「所得税」と「住民税」にフォーカスして、税金が高くなる理由と税負担を抑える方法を紹介します。

税金が高くなる主な理由とは?

会社員の給与から毎月天引きされる「所得税」「住民税」は所得に応じてかかる税金です。具体的には、給与所得(給与収入から給与所得控除を差し引いた金額)から、所得控除額を引いた「課税所得金額」をベースに計算されます。
※会社員の経費にあたるもので、給与収入に応じて差し引かれる金額が決まっています。

所得税は課税所得金額に応じて5~45%の7段階の税率が定められており、当該金額が高くなるほど税率は上がります。一方で住民税は、所得に応じてかかる「所得割」と、所得に関わらず定額が課せられる「均等割」があります。所得割の税率は課税所得金額に対して一律10%です。

給与の金額は変わらないのに、天引きされる所得税や住民税が高くなる主なケースとしては以下のものが考えられます。

※参考:国税庁「No.2260 所得税の税率
※参考:東京都主税局「個人住民税とは

理由1:所得控除の金額が減った

所得控除とは、個人の事情を加味して所得から一定額を差し引ける制度の総称で、間接的に所得税や住民税の負担を抑える効果があります。

所得控除には15種類あり、それぞれ対象となる要件や控除できる金額が決められています。そのため、前年は所得控除の対象となっていたものが今年は対象外となってしまったり、控除できる金額が減ってしまったりする場合もあります。

例えば、家族を扶養している方は「扶養控除」「配偶者控除」「配偶者特別控除」という所得控除を受けられます。しかし配偶者の年収が上がった、子どもが独立したなどの理由でこれらの控除の対象から外れた場合は、これまでより所得控除の金額が減ってしまうため、給与の金額が変わらなくても、所得税や住民税が高くなる可能性があるのです。

なお会社員の場合、所得控除を受けるためには年末調整(一部の所得控除は確定申告が必要)による手続きが必要です。そのため、単純に所得控除の手続きが漏れている場合も、税金が高くなってしまう要因となるので注意しましょう。

所得控除については次の章の「税金が高いと感じたら『所得控除』を活用しよう」でも後述します。

理由2:会社から支給される手当てが増えた

所得税や住民税の基礎となる給与所得には、毎月の給与(固定給)のほかに、各種手当も含まれます。例えば以下のような手当ては給与所得として計上されます。

・残業手当
・休日出勤手当
・職務手当
・地域手当
・家族(扶養)手当
・住宅手当

また賞与(ボーナス)に対しても所得税や住民税はかかるので、「前年よりボーナスが多かった」というような場合も税金が高くなる要因です。

毎月の給与(固定給)が変わらなくても、会社から支給される手当やボーナスの金額に変動がある場合は、その影響で税金が高くなっている可能性があるので、給与明細をチェックしてみましょう。

理由3:住民税が天引きされるようになった

住民税は前年の所得に対してかかる税金です。会社員の場合、年額の住民税を6月~翌年5月の12回に分けて給与から天引きされます。そのため、新社会人などで前年の所得がない方はその年の住民税はかかりません。

通常、給与から住民税の天引きが始まるのは就職2年目の6月からなので、このような方は手取り金額が減ってしまい「急に税金が高くなった」と気付くケースが少なくないようです。同様に前年に給与が上がった場合も、住民税に反映されるのは翌年6月からです。

一方で所得税は毎月の給与金額に応じて天引きされる金額が変わります。税金に反映されるタイミングの違いを把握しておきましょう。

社会保険料が高くなる理由

会社員の給与から天引きされるものには、税金のほかに社会保険料もあります。天引きされる代表的な社会保険料は「健康保険料」「厚生年金保険料」の2つです。

これらの保険料は毎月の給与(標準報酬月額)をベースに50段階(厚生年金保険料は32段階

)に分かれており、標準報酬月額が高くなるほど保険料も高くなる仕組みです。標準報酬月額には各種手当も含まれるため、固定給が変わらなくても支給される手当が増えれば社会保険料も高くなります。また賞与(ボーナス)に対しても一定の保険料率をかけた金額が社会保険料として天引きされます。

「天引きされる社会保険料が高くなった」と感じる方は、手当や賞与の金額も含めた収入金額がこれまでより増えていないかチェックしてみましょう。

 

 

税金が高いと感じたら「所得控除」を活用しよう

会社員が税金の負担を抑える代表的な方法としては、「所得控除」の活用があります。前述のとおり、所得控除は個人の状況に応じて、所得から一定額を差し引く制度です。そのため、ある程度の所得がある場合に節税効果が期待できます。所得が少ない場合は、所得控除の金額が引ききれず、節税効果が少なくなってしまうという特徴もあるので覚えておきましょう。

ここからは、会社員の方が利用できる可能性が高い所得控除について紹介します。お金の価値が変化する

ふるさと納税(寄附金控除)

ふるさと納税は、任意の自治体に寄附した金額のうち、自己負担額2000円を除いた金額が所得税の還付金、および住民税の減額という形で戻ってくる制度です。厳密にいうと一般的な所得控除のように節税効果のある制度ではありませんが、所得控除の一つである「寄附金控除」の仕組みを利用しています。

ふるさと納税は、寄附金額に応じて寄附した自治体の特産品が「お礼の品」としてもらえることも特徴です。お礼の品は、肉・魚介類・米・野菜・フルーツ・飲料・日用品など自治体によってさまざまです。自己負担額2000円でお得にお礼の品がもらえるので、うまく活用すれば生活費の節約につなげることもできるでしょう。普段から購入しているものをふるさと納税の返礼品として選べば、より効果的です。

ただしふるさと納税で全額控除できる(税金として戻ってくる)寄附金額は、収入や家族構成などによって上限が決められています。例えば年収400万円の会社員で独身の方の場合、全額控除できる年間寄附金額の上限は4万2000円が目安となります。寄附金額の上限を超えると、自己負担額2000円を除いた寄附金額の全額が戻ってこなくなるため注意が必要です。年間寄附金額の上限がいくらか目安を知りたい場合は、総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」や、各種ふるさと納税サイトのシミュレーターで調べてみましょう。

また、ふるさと納税で税金が戻ってくるのは寄附した翌年になります。すぐに寄附した金額が戻ってくるわけではないので、家計に負担のない範囲で寄附することが大切です。

なお、ふるさと納税の控除を受けるためには、原則確定申告が必要です。年末調整では手続きできないので注意しましょう。ただし、寄附先の自治体が5団体以内であれば「ワンストップ特例」という制度を利用することで、確定申告による手続きが不要になります。もともと確定申告の必要がなく勤務先で年末調整のある会社員の方であれば、この特例を利用できるので活用してみるとよいでしょう。この制度を利用するためには、寄附先の自治体すべてに申請書を提出する必要があります。

参考:総務省「ふるさと納税ポータルサイト

生命保険料控除、地震保険料控除

生命保険や地震保険に加入して保険料を支払っている場合は、「生命保険料控除」または「地震保険料控除」を受けられます。

生命保険料控除は、一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除の3種類(旧契約の場合は生命保険料控除と個人年金保険料控除の2種類)があり、それぞれ以下のような保険料が対象となります。

生命保険料控除の種類 対象となる保険料の例
一般生命保険料控除 死亡保険、養老保険、学資保険など
介護医療保険料控除 医療保険、がん保険、介護保険など
個人年金保険料控除 個人年金保険料税制適格特約が付加された個人年金保険など

 

所得から控除できる金額は、年間の支払保険料に応じて上記3つの控除ごとにそれぞれ以下の金額となります。なお、3種類の控除を併用する場合の上限額は12万円です。

● 新契約(2012年1月1日以後に締結した保険契約等)の控除額(※所得税の場合。住民税の控除額は所得税とは異なります。)

年間の支払保険料 控除額
2万円以下 支払保険料等の全額
2万円超 4万円以下 支払保険料等×1/2 + 1万円
4万円超 8万円以下 支払保険料等×1/4 + 2万円
8万円超 一律4万円

出典:国税庁「No.1140 生命保険料控除

地震保険料控除も年間の支払保険料に応じて以下のとおり控除金額が決まっています。

● 地震保険料の控除額(※所得税の場合。住民税の控除額は所得税とは異なります。)

年間の支払保険料 控除額
5万円以下 支払金額の全額
5万円超 一律5万円

出典:国税庁「No.1145 地震保険料控除

これらの控除を受ける場合は、勤務先の年末調整で手続きできます。対象となる保険料を支払っている場合、年末調整前に加入している保険会社から「生命保険料控除証明書」や「地震保険料控除証明書」という書類が送られてくるので、手続きが終わるまで大事に保管しておきましょう。

また、家族の保険料を支払っている場合もこれらの控除を受けることができます。ただし、手続きする方が支払っていることを証明できるもの(保険料が引き落とされている通帳など)が必要な場合があります。

小規模企業共済等掛金控除

老後の資産づくりのための制度である「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「企業型DCの『マッチング拠出』」で積み立てている方は、その年に支払った掛金が全額控除の対象となります。

企業型DCのマッチング拠出とは、勤務先で企業型DCに加入している場合に、会社が積み立てる掛金に上乗せして、従業員が任意で積み立てられる制度のことです。所得控除の対象となるのは、ご自身で支払ったマッチング拠出部分のみで、会社が支払った掛金は対象外です。

なおiDeCo、企業型DCともに原則60歳まで引き出せません。そのため、これから始める方は当面使う予定のないお金で積み立てることを心がけましょう。また、iDeCoとマッチング拠出は併用できないので、それぞれの特徴をよく理解したうえでご自身に合った方を選択することをおすすめします。

これらの掛金の控除を受ける場合は、年末調整で手続き可能です。「小規模企業共済等掛金控除」の欄に必要事項を記入しましょう。

関連記事:iDeCoの節税効果はどのくらいお得?3つの税制メリットとシミュレーションを紹介(トラの知恵記事)

医療費控除

「医療費控除」は年間10万円を超える医療費がかかった場合に、超えた分の金額が控除される制度です。

控除の対象となる金額は以下の式で計算します。

(実際に支払った医療費の合計額-(1))-(2)の金額

(1) 保険金などで補てんされる金額:民間の生命保険などで支給される入院費給付金、健康保険など   
  で支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金など
(2) 10万円(その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額)

出典:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)

例えばその年に支払った医療費の合計額が20万円で、生命保険から5万円の給付金が出た場合、控除できる金額は5万円です。(20万円-5万円-10万円=5万円)

なお、ご自身の医療費だけではなく、生計を一にする家族のために支払った医療費も控除の対象となります。

医療費控除を受けるためには確定申告が必要です。年末調整では手続きできないので注意しましょう。実際に支払った医療費は加入している健康保険組合から送られてくる「医療費のお知らせ」という書類で確認できますが、9月から12月分は反映されてないことが多いため、その間の医療費は医療機関で発行された領収書をもとに計算しましょう。

また確定申告書類を作成する際、マイナポータルと連携することで医療費の情報を自動入力することも可能です。詳しくは国税庁の「マイナポータル連携特設ページ」でチェックしてみましょう。

参考:国税庁「マイナポータル連携特設ページ
関連記事:医療費控除の仕組みを知ろう。対象項目や手続き、計算方法を解説(トラの知恵記事)

その他の所得控除

上記で紹介したものを含め、所得控除には以下の15種類があります。

・雑損控除
・医療費控除
・社会保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・寄附金控除
・障害者控除
・寡婦控除
・ひとり親控除
・勤労学生控除
・配偶者控除
・配偶者特別控除
・扶養控除
・基礎控除

このうち、合計所得金額に応じて最大48万円の控除が受けられる「基礎控除」や、その年に支払った社会保険料が全額控除できる「社会保険料控除」は勤務先が金額を把握しているため、年末調整の際に勤務先が手続きしてくれるケースが一般的です。

それ以外の控除は、基本的にご自身で年末調整の際に手続きするか、確定申告する必要があります。本記事で紹介できなかった所得控除も利用できる場合があるので、詳しい要件や手続き方法を国税庁のホームページでチェックしてみましょう。

参考:国税庁「No.1100 所得控除のあらまし

 

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所得控除でどれだけ税金が安くなる?

所得控除による節税効果は、「所得控除の金額×税率」で計算できます。

年収400万円の会社員が以下の所得控除を活用した場合、どのくらい税金が安くなるか計算してみましょう。所得税率は5%、住民税率は10%とします。

活用する所得控除 支払った金額 所得控除の金額
所得税 住民税
生命保険料控除 年間保険料:3万円 2万5000円 2万1000円
小規模企業共済等掛金控除(iDeCo) 年間掛金:12万円
(掛金1万円×12か月)
12万円 12万円
所得控除金額 合計 14万5000円 14万1000円

 

● 軽減できる税金額
所得税:所得控除の金額14万5000円×5%=7250円
住民税:所得控除の金額14万1000円×10%=1万4100円
合計2万1350円

上記ケースでは年間2万円ほどの税負担を抑えることができました。このように同じ年収でも所得控除を活用することで、税金を抑えられることがわかります。実は要件を満たしている所得控除があるにもかかわらず活用できていない可能性もあるので、一度チェックしてみることをおすすめします。

まとめ

会社員の給与から天引きされる税金は所得をベースに計算されます。会社員の所得は収入から給与所得控除を引いた金額であり、そこからさらに所得控除を差し引いた金額に対して税金がかかる仕組みです。そのため、同じ年収でも受けられる所得控除の内容によって税金額は変わってくるのです。「税金が高い」と感じる方は、所得控除を活用して税負担を抑える工夫をしてみましょう。

 

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