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知っておきたいNISAのデメリット。注意ポイントや新NISAも

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※この記事は2021年11月12日時点の内容となります。最新のNISAに関してはこちらの記事をご参照ください。

将来に向けて投資を行う上で『NISA』という言葉を聞いたことはありませんか?NISAは投資を推奨するためにさまざまなメリットがありますが、通常口座にはないデメリットも存在します。この記事ではNISAのデメリットを中心に解説します。

投資優遇制度「NISA」とは

2014年から始まった『NISA(ニーサ)』という制度をご存じでしょうか?株式や投資信託などの金融商品を購入する場合に、知っておいた方がよい制度です。具体的にどのような制度なのかを、まずは解説します。

少額投資非課税制度のこと

NISAとは個人投資家向けの税制度優遇制度です。通常、株式・投資信託等の配当・譲渡益が出た場合は、約20%の税金が徴収されてしまいます。しかし、NISAを利用すると、この税金が一定額まで非課税となるのです。

NISAには『一般NISA』『つみたてNISA』『ジュニアNISA』の3種類があります。それぞれの違いについては以下の通りです。

始める前に知っておきたいデメリット



NISAには個人投資家が投資をしやすいように、投資の利益が非課税になるなどのメリットがあります。一方で、以下のようなデメリットがあることも始める前に知っておきましょう。

1人につき1口座しか持てない

NISA口座を開設できるのは、すべての金融機関を通じて1人につき1口座となっています。そして、口座の変更は1年に1回しかできません。また『一般NISA』と『つみたてNISA』の切り替えも、同じタイミングでしかできないのです。

そのため、例えば「運用する口座を変更したい」「つみたてNISAではなく一般NISAに切り替えたい」と思っても、期間を待たなければならない可能性が出てきます。

通常の口座であればこうした制限はなく、手数料や取引のしやすさなどを比較し、手軽に口座を切り替えることも可能です。

非課税枠には上限がある

NISAの非課税枠には上限があります。一般NISAの場合は年間を通して120万円まで、つみたてNISAは40万円までです。この金額は通算であり、例えば120万円分の金融商品から40万円分を売却したとしても、40万円の枠が新たに空くことはありません。

そのため、少額投資であれば十分な枠ですが、大口投資やデイトレードなどには不向きといえます。非課税枠を大きく超えるような取引をしたいのであれば、通常の口座を使った方がよいでしょう。

損益通算や損失の繰越控除は不可

通常の金融商品であれば、例えば60万円の利益が出た後、40万円の損失が出た場合、相殺した20万円を利益とみなします。これが『損益通算』です。

また、ある年に損失が出て翌年に利益が出た場合、対象課税額は翌年の利益からその年の損失をマイナスして計算することが可能です。これを『繰越控除』といいます。

しかしNISAの場合はどちらも使えません。60万円の利益を出せば、その後に40万円の損失が出たとしても、60万円が課税対象となってしまうのです。納める税金額が増える点はデメリットといえます。

保有済みの金融商品は対象外

非課税が適用されるのは、NISA口座を開設後の金融商品のみです。すでに持っている株式などは、NISA制度の対象にはなりません。

非課税対象としたい場合は、NISA口座を開設した後に金融商品を購入する必要があります。現状運用している資産を長期的に保有して、新規の購入を考えていない人はNISA口座を作るメリットを感じにくいでしょう。

NISA口座での運用で注意したいポイント



NISA口座を利用したからといって必ず利益が出るとは限りません。NISAを使った資産運用で損をしないため、またできるだけ利益を出すためにも、次のポイントを押さえておきましょう。

配当金の受け取り方によっては課税される

配当金の受け取り方によってはNISAの恩恵を受けることなく、配当金に約20%課税されてしまいます。

NISA口座を使っていても課税される受け取り方式が『登録配当金受領口座方式・個別銘柄指定方式』です。指定した金融機関の口座で配当金を受領する方法をさします。

ゆうちょ銀行や郵便局に配当金領収書を持ち込んで受け取る『配当金領収証方式』を選んでいる場合も、NISAの非課税枠を使えません。

非課税で配当金を受け取るためには、保有残高に応じて証券会社の口座で受領する『株式数比例配分方式』を選択しましょう。

移管時に値下がりがあると損をする

通常、最長5年の非課税期間が終了すると、所有している金融商品を売却するか、ロールオーバーするか、別の課税口座へ移管するか選ぶ必要があります。注意したいのは別の課税口座へ移管するパターンです。

仮にNISA口座で100万円分の金融商品を購入したとします。その後5年という期間を経て金融商品が値下がりし、非課税期間終了時に50万円になったとしましょう。

この金融商品を別の口座に移管した場合、取得価額は購入時の100万円ではなく、移管時の50万円です。その後金融商品が値上がりし、80万円になったとします。

この時点で売却すると、『80万円(売却価額)-50万円(移管時の価額)=30万円』分が課税対象となってしまうのです。

このように、実際には損をしているにもかかわらず、課税される可能性が生じてしまうのが、NISAで注意すべきポイントといえます。

ロールオーバーすると翌年の非課税枠が減る

一般NISAの場合、非課税対象となる金額の上限が120万円と決まっていますが、翌年分の上限金額の枠を先に使用する形で上限を超えた金額を非課税とすることができます。この制度を『ロールオーバー』といいます。

ロールオーバーは急な値上がりなどに対して有効である一方で、利用した枠分だけ翌年の非課税対象金額が減ることには注意が必要です。上限を超えた場合、翌年は新規の購入ができなくなります。

2024年以降も使える「新NISA」の導入



現行のNISA制度は2023年末で終了し、2024年からは新たなNISA制度が導入されます。どのような変更が入るのかを解説します。

新NISAは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」が併用可能に

新NISAでは、つみたてNISAが「つみたて投資枠」へ、一般NISAが「成長投資枠」への名称変更されます。年間の非課税投資枠の上限はつみたて投資枠は120万円に、成長投資枠は240万円にそれぞれ拡大されます。なお、ジュニアNISAは予定通り2023年で終了します。

この非課税枠の拡大に加えて、大きな変更点となるのがこれらの非課税枠を両方とも同時に利用できる(※)こと、および非課税期間が無期限になることです。(※同一の金融機関内に限ります)

最大利用枠(生涯非課税限度額)も一人当たり1,800万円に拡大されますので使い勝手が良くなると言えるでしょう。

まとめ

NISAによる非課税枠は、個人投資家や少額投資に有利な制度です。NISAを利用することで、これまで投資をしたことがない初心者でも、投資がしやすくなるでしょう。一方で、金額に上限があることや、損益通算が適用されない点は押さえておく必要があります。

また2024年からは新NISA制度が始まり、さらに安全に資産運用を行いやすくなります。これから投資を始めようと思っている人は、NISAのメリットとデメリットを踏まえた上で、利用を検討してみてはいかがでしょうか。

 

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